隙あらば
手ぐすね引いて待ってゐる貴殿は
何故吾が命を狙ってゐるのか尋ねたところで
黙したまま何にも喋らぬが、
それは卑怯といふものだらう。
と、吾を狙ふ暗殺者をでっち上げたところで
このなんともいひやうのない私のくすんだ魂は色めき立たぬ。
色めき立たぬどころか
その余りにもあざとい私の遣り口に
私は私を心の底から嗤ってゐる。
死を振り翳さないことには
最早、何の感興も起きぬこの堕落した魂には
休息のみ必要なのだ。
私の苦悩の形が煎餅布団に人型として窪みを記せば
それが私の影に似たものであることを知り、
少しは慰みにもならうが、
このどうしやうもなく遣り場のない私は
他にその憤懣をぶつけることは御法度で、
況やものに当たることはいふに及ばず。
然し乍ら、自死願望があると思はれる私を
よくよく思ひなしてみると
それは私が誰の相手にもされないことに対する赤子の如き我儘故にのこと。
その情けなき吾が有り様は救ひがたし。
ならば、キリーロフの如くみっともなく
ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーに強要されて、
拳銃自殺する神人の憐れな終幕を
なぞるが如くに死んでしまへばいいのだが、
それすらもできぬ意気地なしの私は
やはり、表象の吾をGameの如くに撃ち殺す表象を喰らふことで
吸血鬼が生き長らへるやうに
Zombieとして生きるのか。