にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
PVアクセスランキング にほんブログ村
人気ブログランキングでフォロー
Clicky お問合せ

横書きと縦書きの表示切り替え

漆黒の闇

電灯を消した部屋で瞼を閉ぢた途端に、
眼前は漆黒の闇に包まれ、
其処はもう魑魅魍魎の跋扈する世界へと変化する。


何かがぢっと蹲り、
動き出せる機会を窺ひながら、
そいつは己に対して憤懣が募るのだ。
それは、己が漆黒の闇の中で存在してしまふその不合理に対して、
自嘲し、哄笑し、ちぇっと舌打ちしても、
それを受容してゐる。


何と言ふ矛盾。
しかしながら、矛盾に豊穣の海を見るお前は、
やがてその重重しい頭を擡げて、
そいつは何ものにか既に変化を終へてゐるのだ。


漆黒の闇の中、最早魑魅魍魎しか存在しない夢の世界の如く、
お前は、お前を探すのだ。


――世界はさて、お前のものかね。
と訊くものがその漆黒闇には確かに存在し、
それは余りに人工的な声なのだ。


人類を追ひ抜く存在は、
この漆黒の闇の中の魑魅魍魎の中に必ず存在するといふのか。
やがては人類よりも知的な存在が現れる。
その時、その異形にお前は吃驚する筈だ。


そうなのだ。
人間はその存在に憤懣を持ち、
遂には人間の憤懣をも呑み込む存在を
生み出して、
その邪悪な存在を神聖な存在と看做し、
悪を為さうとしにながら、
常に正を為すところのそれは、
メフィストフェレスの如くにしか振る舞へないのだ。


その漆黒の闇の中に留まるものは
何時しか邪悪なものへと変化してゐて、
さうして聖なることを行ふ。


哀しい哉、
漆黒の闇の中に棲まふ魑魅魍魎は
邪悪故に聖なる存在へと昇華するのだ。
それは、何ものも闇に蹲るしかないことにより、
頭を擡げたその瞬間、
闇に毒されて、
そう、毒を呷って
闇に平伏すのだ。
その段階に至ると闇の中の魑魅魍魎は全てが歓喜の声を上げて、
己が存在することに対する至福の時を味はふのだ。


嗚呼、この漆黒の闇は薔薇色の世界と紙一重の存在なのか。


闇を愛するお前は、
その漆黒の闇の中でゆったりと微睡む。

コメントを残す