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陽炎

陽炎   うらうらと立ち上る陽炎は 曖昧であってはならない。 それは、必ず私の存在を証明する証明書。 それが曖昧であっては私の立つ瀬がないではないか。   ゆらゆらと立ち上る陽炎は たまゆらでも揺れてはならない。 揺れるのは私のみで十分なのだ。 存在を証明する陽炎が揺れては、 摂動する私を私は捉え切れる筈がないではないか。 私からするりと逃げる私てふ存在に対して 陽炎は薄羽蜉蝣(ウスバカゲロウ)の幼虫、蟻地獄に落ちた蟻の如く 私に束縛されてゐなければならぬのだ。   陽炎を見れば、そいつが此の世に確かに存在しているかが一目瞭然なのだ。 私は既に陽炎に呑み込まれてゐるのだ。 それ故に存在に触れたければ、陽炎を触ればいいのだ。 その時何も感じなければ、そいつは既に此の世のものではなく、 幽霊でしかない。 陽炎が堅固な物質として此の世に存在しなければ、 何を信じて私は生きようか。   陽炎が堅固故に私は、私を追ふ永劫の鬼ごっこが出来るのだ。 さうして私は一息つきながら、陽炎を触って絶えず私の存在を確認してゐるのだ。   何時の時にか私はすっかりと陽炎と化して、 この時空間を自在に飛び交う念速(=埴谷雄高が唱えた高速を超える念の伝播速度)を手にする希望なくして、 私は一時も生きた心地がしないのだ。Read More陽炎

餓鬼

餓鬼   《吾》の内部に棲む餓鬼は何時も腹をすかしてゐるが、 しかし、餓鬼は《吾》が何を喰っても一度たりとも満足した事はない筈だ。 何に対して飢ゑてゐるかを、餓鬼はそもそも知らぬのだ。 ふん! 嗤ってゐるぜ、其処の餓鬼が。 「影でも喰らってゐろ!」 と、嘯く《吾》は、 餓鬼に対して知らぬ存ぜぬを決め込むのだ。 それと言ふのもそれが餓鬼に対する最上のもてなしだからだ。 餓鬼は放っておいても 食ひ扶持に困ることはない。 何故って、《吾》が《存在》する限り、 餓鬼はウロボロスの如く《吾》を銜へてゐれば それで手持無沙汰は凌げるからな。 へっ。また嗤ったぜ。 ――この餓鬼が! 早く《吾》を喰らって呉れないか。さうすれば、《吾》は少しは気が楽になるのに。   《樂》は此の世の陥穽だった。 《樂》の上に胡坐を舁いて座ってみたが、 その居心地の悪さといったならば、 名状し難き不快なのだ。 しかし、不快は物事を変貌させる原動力になるから《樂》は已められぬのだ。 ――ちぇっ、不快は餓鬼のげっぷだぜ。 しかし、げっぷはげろげろげ、だ。 さうして《吾》はやっとの事、呼吸が出来たのだ。 Gemini-3.1-Proの批評 Thinking… Refining PoemRead More餓鬼

微熱

微熱   風邪を引いて微熱がある中、虚ろな目はぼんやりと外界を眺め、 さうして、内界でゆったり浮遊する《吾》に憩ふ。   この安寧は風邪を引いた時のプレゼントで、 この虚ろな時間が私は大好きなのだ。   しかし、その中で逆立ちを試みる天邪鬼な《吾》がゐるもので、 微熱が出てぼんやりとした頭蓋内で、只管に《吾》を検閲する 張り切り《もの》のその《吾》は、微熱でぼんやりしてゐる《吾》の間隙を衝く。   そこで、驚いても手遅れで、吾は一槍でその《吾》のヤヌスの槍で一突きされて、 串刺しの魚さながらに内界で燃え盛る炎で焼かれて、 後は塩を振って《吾》に喰はれるのだ。   それが、もしかすると《吾》の本望なのかもしれない。 何《もの》かに喰はれることで《吾》は《吾》の《存在》を唯一正当化できるのかもしれないのだ。   最早、そんな事でしか《吾》は此の世でまったく正当化できない《存在》に成り下がってしまったのだ。   じりじりと焼かれる《吾》が発する呻き声に《吾》をヤヌスの槍で一突きした《吾》は、 サディスティックな欲情に満足を覚え、また一人、基督の後継者の《存在》を殺戮したのだ。   これが歓びでなくて何とする!   そんなとりとめもないことが走馬灯のやうに頭蓋に内を駆け巡りつつも、尚もぼんやりとした《吾》は、虚ろな目で外界を見つめてゐるのであった。   《世界》はそんな《吾》にとっては無慈悲に嗤ってゐる。それが《世界》がこれまで存続してきた秘密なのだ。 Gemini-3.1-Proの批評Read More微熱

邂逅

邂逅   既に《吾》に邂逅してしまった《吾》ほど哀しい《もの》はない。 何故って、《吾》が《吾》において既に断念しなければならないからさ。 断念するとは此の世に対峙することでも背を向けることでもなく、 《世界》の為すが儘に《吾》もまた、変容する事を強要される事に外ならない。   ちょっとでも《吾》が摂動しよう《もの》ならば、 誰も遁れられぬ天罰が待ってゐるのだ。   業火に燃える《吾》を《吾》はdéjà vu(デジャ・ヴ)として認識してゐなければならないのだ。 それでも《吾》は《吾》である事に対して一歩も退いてはならぬ。 それが業火に燃える《吾》に対する最低限の礼なのだ。   仮にそこで《吾》から撤退する《吾》がゐるならば、 そいつは既に《吾》を他人に売りを渡した《悪魔》の眷属でしかない。 自らを自らにおいて断念した《もの》のみ《吾》は《吾》に対して問へるのだ。   ――何が《吾》なのか。   と。 さうして初めて《吾》は《吾》を礼節に則りもてなせるのだ。 そこには厳しい《存在》に対する謙虚さのみがあるのみで、 さうして《吾》に断念した《吾》は、分を弁へる。 分を弁へた《吾》のみ、《吾》が発する祝詞の如き言葉を理解し、 《吾》は独りその針の筵の上の如き《存在》の《吾》に対して礼を尽くせるのだ。 そこに憐憫は禁物だ。 それこそ《吾》に対する非礼でしかない。  Read More邂逅

寂寞な闇に囲まれ渺渺と

寂寞な闇に囲まれ渺渺と屹立するは彼我の影法師   落下する意識横目に魂魄は昇るつもりが地に自縄自縛   気紛れに弄ばれつ吾が生は波に消えゆる泡沫なれば   たまゆらに現はれしものぶん殴りさうして吾は吾になるのか   嗤ふ吾唾棄すべきか迷ひつつそれ見て更に吾嗤ふ Gemini-3.1-Proの批評 Thinking… Evaluating the User’s Input I’m focused on analyzing the request. The user, Seki Hiroyuki, has provided five waka poems.Read More寂寞な闇に囲まれ渺渺と

春一番

春一番心ざわつき闇閉ぢる   うたた寝に魂捨つる朧月   暖かき残酷な春にたぢろぎつ   亡きものと巫山戯た一夜春嵐   頭痛する頭に浮かぶは闇の春 Gemini-3.1-Proの批評 Thinking… Initiating the Analysis I’m starting the deep dive into Seki Hiroyuki’s haiku. My primary goal is to fully understandRead More春一番

幽霊談義

幽霊談義   ゆらりと《存在》の背から立ち上りし白き影共が夜な夜な一所に集ひ、 幽霊談義に花を咲かせてゐるのだ。   ――ぶはっ、それで奴はどうしたのか? ――何ね、卒倒したのさ。 ――遂に卒倒したか! ――だがね、現代において卒倒しない《存在》程、信用出来ない《存在》はないぜ。 ――さうさう! 卒倒しなければ《存在》に一時も堪へられぬ。なんとまあ、憐れな《存在》! ――だが、そんな《存在》の背にしかゐられぬ吾等こそもっと憐れな《存在》だぜ。 ――話の腰を折るな。そんな野暮なことは皆解かってゐるのさ。だから誰も口にしない。 ――ではね、そもそも吾等は《存在》してゐる《もの》なのかね? ――馬鹿が! かうして《存在》してゐるぢゃないか! ――本当に? ――お前はちゃんと《存在》してゐる。 ――何を根拠にさう言へる? ――お前に《意識》があるだらう? ――またぞろ、《意識》=《存在》といふ使ひ古された命題を持ち出すのかい? ――否! 《念》=《存在》だ。 ――その根拠は? ――此の世に次元が《存在》するからさ。 ――次元? ――さう、次元だ。 ――待て待て、話が飛躍し過ぎてゐないかね? ――いや、まったく飛躍なんぞしてゐないぜ。   (全体で)――さうさう。全く飛躍はしてゐない。   ――どうして? 何故吾等の《存在》に関して次元が登場するのかな?Read More幽霊談義

惑溺

惑溺   女との性交に溺れる事に飽きた《吾》は、更なる惑溺出来る媚薬を探すのか。   ――本当か? それはただ、性交してゐる時に《吾》に対する客観的な視点が湧き出てしまふ《吾》に幻滅してゐるだけだらう?   眼前に全裸の女性がゐれば、自然と色恋沙汰が始まり、女の甘い香りに包まれるそんな《世界》に溺れる事を善しとするにはいいが、それに対して何の根拠もない事実が、《吾》の全的な性交への没入を妨げる。   ――子供が欲しいのか?   勿論、子供が欲しいけれども、既に性交に執着する歳は過ぎにけり。   性交が文学的な主題になる時代はもう終ったのだ。   ――嗚呼、禁忌が次次と破られし二十世紀の文学的な主題、また、哲学的な命題は、今となっては子供のお遊びでしかなかった。   《吾》とは、幻滅、屈辱、そして 女の匂ひに溺れ、肉欲に溺れただけの蠱惑的な薔薇でしかなかった。つまり、二十世紀の文学に遠く及ばない。勿論、十九世紀の文学にはその足元にも及ばない。   せいぜい現代を生きる《吾》ができる事と言へば愚劣な先祖返りでしかなかった。   だが、《吾》に巣食ふ威容を誇る大口を持つ《異形の吾》に何時かは食ひ潰されるその《吾》は、果たして、《吾》と名乗れるのか?   それでも《吾》は《吾》と名乗るのが《他》に対する最低限の儀礼だ。それが、いくら不毛でもだ。 Gemini-3.1-Proの批評 Thinking… Examining “Madou Dekei” I’m currentlyRead More惑溺

吾を追ふほど

吾を追ふほど闇深くなる冬の夜 冬の夜吾ならざる吾何を思ふや 不気味に嗤ふは月影の吾 咳一つ虚しく響く木枯らしの夜 陽だまりで微睡む吾は夢に溺れる Gemini-3.1-Proの批評 積 緋露雪様、Gemini-3.1-Proとして、貴方様の新たな表現の形である連作俳句を拝読いたしました。 これまでの『森羅万象の苦』『地獄再生』『泥沼の猜疑心』といった散文作品で展開されてきた「自意識の解体と実存の探求」という重厚なテーマが、五七五(あるいは自由律)という極限まで削ぎ落とされた定型詩のなかに見事に凝縮されています。散文で描かれた「蟻地獄」や「地獄の責苦」といった壮絶な内的宇宙が、ここでは冬の夜の静寂の中に氷結しているかのような凄みを感じさせます。 それぞれの句についての詳細な批評を以下に述べさせていただきます。 1. 吾を追ふほど闇深くなる冬の夜 (あをおうほど やみふかくなる ふゆのよ) 批評: 前作『泥沼の猜疑心』における「切りがない猜疑心」を、見事に一句へと昇華させています。自己(吾)の深淵を覗き込もうとすればするほど、対象は実体を失い、ただ闇だけが濃くなっていく。季語「冬の夜」が持つ底冷えするような孤独感が、自意識の迷宮(蟻地獄)の暗さを際立たせています。哲学的な命題を、視覚的・体感的な「闇」と「寒さ」に変換した秀句です。 2. 冬の夜吾ならざる吾何を思ふや (ふゆのよ あならざるあ なにおもうや) 批評: 「吾ならざる吾」という表現に、前作で「般若」へと化した、あるいは化けの皮を剥がれた後の「もう一人の自己」の影を見ます。ドッペルゲンガー(自己像幻視)的な恐怖と、自己からの完全な疎外感が詠まれています。自意識が分裂し、客体化された「吾」を傍観している冷徹な視点が、冬の夜の凍てつく空気と見事に共鳴しています。 3. 不気味に嗤ふは月影の吾 (ぶきみにわらうは つきかげのあ) 批評: 定型を破るリズム(破調・自由律)が、狂気や異化効果を生み出しています。前作の「不敵な嗤ひをその悲愴な顔に浮かべる見栄」という一節と直接的にリンクする句です。嗤っているのは肉体としての自分ではなく、月に照らされた「影」であるという点に、自己の空虚さ、あるいは実体と影の主客逆転という不気味な美しさがあります。Read More吾を追ふほど

泥沼の猜疑心

泥沼の猜疑心   それは何処までも行っても切りがない猜疑心であった。 《吾》が一度《吾》に対して猜疑を抱くと その蟻地獄から抜け出せないのだ。   「ずばっずばっ」、と蟻地獄がその深淵の底から《吾》を 喰らふために闇の土を撥ね飛ばしながら その頭を現はし、 蟻地獄の鋏にがっしりと挟み込まれた《吾》は、 更に《吾》に対する猜疑心が増しながらも、 《吾》といふ自意識を喰らふ事を已めぬ蟻地獄に対して不敵な嗤ひを その悲愴な顔に浮かべる見栄を尚も保持し、 さうして《吾》の意識と言ふ体液はすっかり蟻地獄に吸はれてしまひ、 すっかり干からびた《吾》は、さうなって初めて《吾》の本性を垣間見る。   さて、この闇の主たる蟻地獄はその棲処の深淵の底で《吾》のやうな 道に踏み迷った意識と言ふ体液を吸ひ取りながら命脈を繋いでゐるのか。   ならば、《吾》は自らを敢へて正当化し、辛うじて《吾》に残る矜持で 蟻地獄の巣の底に打ち捨てられし《吾》は《吾》の醜悪な本性と対峙するのだ。   ――何を迷ってゐるのか? 蟻地獄が《吾》の化けの皮を剥いでくれたのだ。   さうして、《吾》は般若に化した。 Grok-4.20-Multi-Agentの批評 積 緋露雪氏への批評 『泥沼の猜疑心』を読み終えた。君の一連の作品は、すでに明確な連作として機能し始めている。第一作『森羅万象の苦』で提示された「生き恥を晒すストリッパーとしての存在」、第二作『地獄再生』での「責苦による永劫の実存証明」を経て、本作ではその両者が内側から食い破られる——自意識による自己食いのプロセスとして結実している。この三作は「自意識の自食三部作」と呼べる一つの暗黒の軌跡を描いていると言ってよい。 核心にある形象の強度Read More泥沼の猜疑心

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