そいつは立ち上がりし 不図気付くと俺は何処か見知らぬ場所で覚醒した。 開けられた瞼を再び閉ぢて夢の残骸が転がってゐないか探してみたのだが、 見えるのは吾が五蘊場が表象せし意味不明な映像ばかり。 仕方なく、再び瞼を開け、前方をかっと睨んだところで、 何が解る訳でもないのであるが、 俺は自分のゐる場所を何としても知りたくて、 ぎろりと辺りを眺め回したのである。 しかし、其処は余りにも殺風景で、 砂漠のやうでゐて、砂漠に非ず、 何やら月面のやうにも思へなくもないので、 此処は地上とは別の何処かのやうな気がしないでもなかった。 と、不意にそいつが地平線の彼方で立ち上がり、 時空を食ひ始めた。 そいつが時空を喰らった後には 余りにありきたりな表象でしかない闇が現はれるのであるが、 そいつはその闇をもまた喰らひ、 その後に時空は時空の存在を全く失い、 餅が焼かれてゐる時にぷくりと膨らむやうに その穴があいた筈の時空の穴へと時空は吸ひ寄せられて、 その穴に吸ひ込まれた時空は時空外でぷくりと膨れて、 新たな完結せし宇宙が生まれるやうなのであった。 そいつは、さて、神の眷属なのか、と、 余りの馬鹿らしさに俺は嗤はずにはをれなかったのであるが、 尤も、そいつは最後に俺を喰らふのは間違ひない。Read Moreそいつは立ち上がりし

