アストル・ピアソラを聴きながら 「リベルタンゴ」が流れてゐる。 激情の中に哀愁漂ふバンドネオンの音色に誘はれるやうにして 私は独りテロルについて思ひを巡らせてゐる。 この一見余りにも不釣り合ひな組み合わせは、 しかし、ピアソラの演奏で断然際立つのだ。 テロルの残虐極まりない所業に対して ピアソラの演奏は何処か藁をも摑むやうにしながらも これしかないと言ふ旋律をしっかりと紡ぐその手捌きは見事の一言で テロルが人人にもたらす憎悪すらをもピアソラが紡ぐ旋律は呑み込み そして、逆巻くバンドネオンの音色に私も完全に呑み込まれる事に快楽を見出し、 テロルが齎す激しい憎悪の感情すらをもピアソラの演奏は吞み込んでゐて、 その尋常ならざる演奏に唯唯感嘆するのみなのだ。 テロル。 これは現代において既に戦争を指すものとしてその様相を変化させたが、 さうだからこそ、ピアソラの途轍もなく先鋭化したタンゴの楽曲は この不安な世界情勢の中でも一際際立つのだ。 それは何故なのか。 多分、それはピアソラが音楽と壮絶な戦ひを行ってゐた痕跡が ピアソラの音楽の中には確として存在し、 しかもピアソラは何処か恬然としてゐる。 こんな音楽を生み出してしまったピアソラの苦悶は、 しかし、如何程であったのか想像に難くないが、 その壮絶な戦ひぶりに テロルは、さて、何処まで、無辜の人人を殺して、 人人に憎悪を植ゑ付ける事に成功するのか、Read Moreアストル・ピアソラを聴きながら

