仄かなるもの それは一体何なのだらうか。 仄かにその気配だけが感じられる存在と言ったらいいのか、 何やら傍らにゐるに違ひないのだが、 それを「これだ」と名指せぬのだ。 名指せぬ故にそれを存在するものとして認識出来ず、 俺はくっと奥歯を噛みながら、 この何とも言ひ難い事態を我慢するしかないのだ。 それは俺の世界観を全く覆すほどの出来事に違ひないのであったが、 何とももどかしく、終ぞ名指せぬのである。 つまり、言葉では言ひ表せぬものが俺の傍らには存在するのであったが、 それが「ある」とも断言出来ず、 その仄かな気配を漂はせる何ものかは しかし、ある、若しくはゐるのである。 そんなわけで俺は瞑目するのである。 さうして瞼裡に現はれる表象群は 傍らにゐるものの気配をじんじんと感じながらも 俺を翻弄するに十分なのだ。 何が俺を此処に佇立させ、 さうして瞑目させるのか。 つまりは俺の傍らにゐるに違ひないそのものの気配に 俺はさう感じるだけで既に翻弄されてゐて、 俺の存在はそれにより脅かされてゐるのかもしれないのだ。 「そんな奴」と名指してみても それは全く的外れで、Read More仄かなるもの

