微睡みから目覚めしそれは 長き眠りから目覚めしそれは 不意に世界に目をやり、 世界を愛でながらかう呟いた。 ――これが世界と言ふものか。なんだかありきたりなものだな。 さうして身を起こしたそれはのっそりのっそりと歩き出したのだ。 それがどこを歩いてゐるのかを自身ではさっぱりと解らぬままに 当てずっぽうに歩いてゐる。 と言ふのもそれは直ちに世界が触りたかったのだ。 世界がどんなものなのか触感で味はひ尽くして 長き眠りの間に努努見てゐた世界と言ふものが 一体全体何なのか一時も早くに知りたかったのだ。 しかし、それはミダス王の眷属のやうに世界に触る先から 世界のものは砂と化してはらはらとその形を崩して それの掌から零れ落ちてゆくのであった。 ――なんたることか。 それは世界が砂上の楼閣でしかないと言ふことを それは初めて知り、愕然となるのであるが 尤も、世界とはそもそもそんなものなのかもしれなかったのだ。 それは触れられるものには手当たり次第に触るのであったが、 全ては砂へと変はってしまふばかりなのであった。 それはなんと哀しい存在なのだらうか。Read More微睡みから目覚めしそれは

