惚けてしまった哀しみの 惚けてしまった哀しみの 茶色い色はすっかり褪せて、 柿渋のやうな衣魚が残りました。 ――どうして私は と思ふ以前にすっかり草臥れ果ててゐたのです。 それでもやっぱり哀しいと言ふ感情は幽かに蠢いてゐて、 私は無言で涙を流すのでした。 惚けてしまった哀しみは 私の心を蔽ひ尽くしてみたはいいが、 鋭き刃物で剔抉された私の心からは どろりとした哀しみが腐臭を発して流れ出たのです。 それは眼球を抉り取られるに等しい苦悶をもって 眼窩のやうな穴が心に開いたのでした。 さうして、既にどろりと溶けてしまった私の脳味噌は その眼窩からちょろりと流れ出て、 まったく死靈と化してしまってゐたのです。 生きる屍は 此の世の多数派に違ひなく、 誰もが既に鰯の目玉のやうな目つきをしながら、 己を食らふ奴の目玉を睨み付けてゐる筈なのです。 まだしも、食はれるだけでも死んだものは幸せなのでせうか。 既に腐った吾は食ふには最早適さずに、Read More惚けてしまった哀しみの

