戦(おのの)くのは誰か 漆黒の闇の中にぢっと蹲って息を潜めてゐるそのものは、 妖精の闇の衣を被っては 雲間の曙光のやうに ぎろりと一つ目の眼(まなこ)のみを光らせて、 外部を窺ってゐる。 しかし、そのものを包むか細い空間は顫動してゐる事により、 そのものはぶるぶると恐怖に震へ、 若しくは、そのものは巨大な巨大な重力を持つ事により 強烈な重力波を発しながら、その存在を暗示させてゐるのか。 いづれにせよ、そのものはぶるぶると震へてゐて その震へが止まらぬのは確かなのだ。 存在すること自体が震へを伴ふならば、 そのものは、身を隠すのに大きな失態を演じてゐて、 正(まさ)しく頭隠して尻隠さずの典型でしかない。 そのやうな状況でも、身を隠さねばならぬそのものは、 自身に負ひ目を負ってゐるのか、 それとも存在以前の問題なのか。 ――馬鹿が。 と不意にそのものは呟いて、己の存在を嘲笑ってゐるのかも知れぬ。 その漆黒の闇は、絶えず光を当てられてゐるのであるが、 闇であることを已めず、唯、一つ目の眼のみがぎろりと光ってゐて、 何ものかが存在する事だけは確かなのだ。Read More戦(おのの)くのは誰か

