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Tag: 月下の彷徨

月下の彷徨

月下の彷徨   かそけき月光の下、 物の淡い影の中を彷徨す。 その中はまるで暗渠の中のやうに 絶えざる現在が眼前に現はれては消え、 さうして時が移りゆくのであったが、 そこでは何ものも一斉に沈黙し、 押し黙ったまま、 いづれもが吾の中に蹲るのである。   だが、そのいづれもが吾を知らぬまま、 いづれもが見失った吾を求めて、 月光の下、彷徨ひ歩く魂魄の蝟集する場で、 ――あれは……。 と吾の異形に遭遇してはびっくり仰天しながら、 吾を名指さずにはゐられぬのである。   その異形の吾が何事かを呟くと、 吾は聞き耳を欹(そばた)て、 その言葉の一字一句も聞き漏らさぬやうにと胸奥がざわつくのだ。   さうして浮き足立つ吾は、 最早此の世の物とは思へずに、 唯唯、魂魄の一種になった心地がして、 何となく幽体離脱したやうな吾の存在の奇妙さに苦笑ひする。   しかし、最早吾が魂魄の如き物と化し、吾の中に幽閉された吾をして、 吾は憤懣を吾に向かってのみぶちまけるのだ。 さうしなければ、吾は吾の存在根拠を失ふもののやうにRead More月下の彷徨

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