朝 余りに鮮やかな朝日に対して吾が心は未だに艱難辛苦のままにある。 何にそんなに囚はれてゐるかと問へば、返ってくる自問自答の声は、 ――……。 と黙したままなのだ。 何に対しても不満はない筈なのだが、 己の存在の居心地の悪さといったらありゃしない。 こんな凡庸な、余りに凡庸な不快に対して やり場がないのだ。 何に対してもこの憤懣は鬱勃と吾が心に沸き立ち 存在すればするほどに吾は般若の面を纏ひ始めるに違ひない。 ――シシュポスに対しても同じことが言へるかね? ――シシュポスこそが最も安寧の中にある快感を味はひ尽くしてゐる筈である。 ――どうして? ――何故って、シシュポスはすべきことがしっかと定められてゐるからね。それは労役としては辛いかもしれぬが、心は晴れやかに違ひないのだ。労役が課された存在といふものは、何であれ、心は軽やかにあり得るものなのだ。 ――それって、皮肉かね? ――いや、皮肉を言ふほどに私は弁が立たぬ。 ――そこまで言ふと、もう、嫌味だね。 ――シシュポスは労役を得ることで自由への闘争は断念してゐる。 ――何故断念と? ――自由を求めるなら、神からの業罰すら打擲しても構はぬ筈だが。 ――つまり、シシュポスは神に既に馴致された自由なき存在である。 ――だから? ――自尊の境地にシシュポスはある。 ――それって、自分の思ひやうでどうにでもなるといふだけのことじゃない? ――当然だらう? ――つまり、他は想像するしかないと言っているだけじゃないか! ――当然だらう? 外(ほか)に何がある?Read More朝

