水面(みなも) 変転に変転を重ね、 また、無数の波が重ね合ふ水面に この時空の面影を見るとすると、 一度たりとも同じ様相を呈さない水面は、 或る意味刹那的なのかもしれぬが、 その刹那に凝縮した時空の切片には 存在のあり得る余地が浮き彫りにされるのかもしれぬ。 水面は何時まで見てゐても全く飽きることなく、 吾が胸奥を打つのだ。 その儚い様相は絶えず流れゆく時間を象徴し、 また、その絶えず変化して已まない水面には 存在の一様相が象徴されてゐる。 ナルキッソスが水面に移る己の相貌に美を見たのは、 絶えず揺れる水面に移るその相貌が生きてゐるかのやうに また、ナルキッソスが既に生霊の如くに化して それが憑りついてしまった故のことなのでなからうか。 水面はそれ故に恐ろしいものなのかもしれぬ。 水面の揺れ動きが吾が魂魄の波長とぴたりと合ふ瞬間があり、 それが吾が存在において間が射す時なのだらうか。 多分、水面の上の無数の波の位相は、 必ず私の念、若しくは魂魄の拍脈する波動と同調し、 さうして共振を起こしては 吾を水面に釘付けにするのだ。 Read More水面(みなも)

