溢れ出す死 これまで封印してきた死が溢れ出す此の世で、 これまで何の準備もしてこなかった現存在は、 愚鈍にも漫然と生きてゐるが、 死はいづれの存在の隣りにでんと構へてゐて、 ふぉっふぉっと嗤ってゐるのが解らぬ現存在は、 既に遠い昔から世人と化してゐる。 だからといって現存在は死に対して無関心であったわけではなく、 いの一番に己の死に対しては敏感で、 例へば己の死に対しては葬儀の準備に余念はなく、 既に己の人生の締めくくり方は決めてゐる。 しかし、現在溢れ出してゐる死は あまりに凄惨で、また、不合理極まりない死であり、 悠長に自分の葬式の仕方を決めてゐる場合ではない。 死体を何ヶ月も放置したまま晒してゐなければならぬ事態が着実に侵攻してゐるのだ。 この何をも呑み込む死の渦動の中に置かれし現存在は、 その流れに呑み込まれながら、煩悶し、 そして、断末魔の声を上げる。 ――何故、俺は殺されるのか。 と。 抜け目のない死神は、 今日も誰かの死を招来しては、 ――ふっふ。 と、嗤ひが止まらぬのだ。 芸術的に現存在を殺すその手際の良さは、Read More溢れ出す死

