猫のやうな空 猫のやうな空に歩を進める魚は、 やがて来る嵐を綿飴のやうに食らふのだらう。 そして、漁師は空を泳ぐ魚を捕らへて剔抉し、 腸(はらわた)を取って 月光で焼き切る。 ほんわかと首を絞める猫のやうな空は、 身軽に人間の影に張り付き、 その鋭き牙で存在を噛み切る。 さうして空から降ってきた人間は 夢の中で、溺れ死ぬ。 機械の轟音が響く静かな夜に、 首を吊った奇妙な果実、つまり、人間は ビリー・ホリデイのレコードをかけて 黒光りし、 絶望の慟哭を月に向かって上げたのだ。 陰(いん)の月には兎が棲むと言ふが、 希望が屈折した月光は 絶望がよく映え、 希望を袋小路へと追ひ込むのだ。 直線が曲線な直接的な世界は 猫のやうな空を怒らせて、 毛を逆立てた空に呑み込まれる。 何もかもが憂愁の中に身を投じ、Read More猫のやうな空

