眩暈 どくっと鼓動がすると、 奇妙に世界が歪曲し、 真白き霧のやうなもので世界が蔽はれ始め、 俺は五蘊場に逃げ込みつつ、卒倒するのだ。 これには何の予兆もなく、卒倒は忽然とやってくる。 卒倒しながら俺の意識は白濁する事なく妙に冴えて 倒れた俺と自己との対話を冷静にしてゐるのだ。 眼前は、しかしながら、何にも見えず、 唯唯、いつもより激しい鼓動を感じるのみなのだ。 その時、俺は覚悟を決めてゐるのか、妙に気持ちが悪いほどに冷静なのだ。 そして、五蘊場に逃げ込んだ俺は、 やどかりがちょろちょろと貝殻から足を出すように 俺の内部の目を少しづつ広げながら、 俺と言ふ存在を確認する。 とはいへ、卒倒してゐるのは徹頭徹尾俺なのだが、 何処か第三者的に俺は俺を観察してゐる。 其処にしかし、俺の正体は見えず、 唯、白から赤く染まった血の色の世界を凝視するのみなのだ。 確かに、俺は最早病んでゐるに違ひないが、 だからといって何をするわけでもなく、此の死に近づきつつある俺を 何処かで楽しんでゐるのだ。 それは薄氷の上でダンスを踊るやうなもので、Read More眩暈

