顫動(せんどう) かそけく羽ばたく蚊の羽音のやうに 時空は絶えず顫動し それに伴ひ俺を俺足らしめる時空も顫動する 嗚呼、其処に飛び立つのは何ものなのか。 さうしてかそけきは音を立てて、俺の影から何かが飛び立ったのだ。 これをドッペルゲンガーと言ふのかどうかはいざ知らず、 ただ、俺の影が最早俺の手に負へぬものとして 此の世に存在してゐる事だけは確かなのだ。 仮令それがドッペルゲンガーだとして それが俺の死の予兆に過ぎぬとしても それはそれで祝杯を挙げるべき事象に違ひない。 さあ、祝祭の始まりだ。 俺は俺の死を祝ふべきものであり さうでなければ、一体俺の存在は何なのか。 死は即ち祝祭の始まりなのだ。 これ以上、楽しいことはない。 生に纏はる苦悶は全て捨て去り、 何ものかが確かに俺の影から飛び立ったのだ。 それはかそけき顫動をし、 さうして今も尚、俺の頭蓋内で顫動してゐる。 先に逝ってしまったJAGATARAの江戸アケミが嗤ってゐるかな。 高田渡がまだ、生ギターを抱へて吟遊詩人さながらにフォークソングを歌ってゐるかな。 将又、浅川マキが黒づくめの衣装を纏ひ、Read More顫動(せんどう)

