潰滅 在るものが静かに潰滅しゆく様は、 なんと自然な様なのだらうか。 しかし、此の自然といふ言葉が曲者で、 果たして人智で自然そのものを捉へられるとでも 哀れな人類は考へてゐるのだらうか。 そもそも人智を超へてゐるから自然としか表現出来ぬのであり、 仮令、此の世界を理解し得ても、 自然は自然として何の存在にも無関係に存在し、 そのゆらぎの中でのみ、生物は存在するに違ひない。 潰滅しゆくもの達の怨嗟をも受け容れる此の自然は、 また、誕生の産声も受け容れて、 生滅の両睨みと言ふ神業を難なくやり遂げる此の自然に対して、 現存在は、その慈悲に縋り付くしかないのだ。 何のことはない、 自然がほんの一寸でも荒ぶれば、 人間なんぞひとたまりもなく潰滅し、 さうして現はれた廃墟をも呑み込み、 自然は廃墟を次第に自然に同化しつつ、 最後は自然に帰すると言ふ循環する論理は、 人間の最も嫌ふ論理形式であるが、 しかし、事、自然を相手にするときは、 どうあっても循環論法に陥るしかないのだ。 そして、人間もまた自然ならば、 論理的といふのは先験的に循環論法を指すのであって、 止揚したと見えても、それは一時的な論理の逃避行でしかなく、 ジンテーゼで何かしら語り得ても、Read More潰滅
陰翳
陰翳 夕闇も深まる時、 森羅万象は一斉に陰翳に色めき立つ。 ざわざわとひそひそ話を始めるものたちは、 吾が存在により生じる陰翳に、 己の己に対するずれを確認しながら、 自分の居場所から離れてゆく。 何て心地よい時か。 俺が俺から離れる時に生じる俺の陰翳に 俺は快哉を送るのだ。 何故って、 俺が俺からずれると言ふ得も言はれぬ感覚は 全て陰翳として可視化され、 また、その陰翳には俺の異形が犇めき合ふのだ。 昼間は影を潜めてゐた異形のものたちは、 世界に陰翳が生じる此の夕闇深き時に、 その重たい頭を擡げ、 森羅万象に生じる陰翳に水を得た魚のやうに 自在に動き回り始める。 その時こそ、俺は俺から一時遁れる。 此の至福の時に、俺は安寧の声を上げて、 しみじみと俺を振り払ひ、 俺から遁れた俺を抛っておくのだ。 そして、俺が抜けた俺の抜け殻は、 最早俺である必然はなくなり、Read More陰翳

