ふらつきながらも 道なき道をふらつきながらも一歩一歩と進むその姿勢に酔ってゐるのか、 陶然とするおれは、悲劇のHeroにでも為ったと思ってゐるやうで、 全く唾棄すべき悪臭を放ちながら、 此の世に存在してゐるその存在の仕方 […]
異形 頭蓋内の闇の中に棲まふ異形のものたちに 何時喰はれるか解らぬままに、 冷や冷やしながら、 また、背中に嫌な汗を流しつつ、 おれはそれでも此の世に佇立しなければならぬ。 それは時空間を切り裂くやうにして […]
異物を吐き出すやうに そいつは異物を吐き出すやうに おれをあしらった。 その手捌きは慣れたもので、 おれは路傍の石と同等に 恰もなきが如くに、 否、あるにもかかはらず見出さうとしなければ、 決して見出されることがない運命 […]
棄てられる 一瞥しただけであなたに私が棄てられるのは解りました。 あなたは遠回しに事の核心を何とか語らうとしてゐる苦労は認めますが、 そんな努力は虚しく響き、棄てられるのは私なのです。 あなたは歯牙にもかけぬ、魅力がない […]
春眠暁を覚えず 矢鱈に眠い一日が過ぎて行ったのです。 どうしても起きてゐることが困難で、 とはいへ、私は何にも疲れてはをらず、 只管に眠い一日だったのです。 無理矢理に起きたところで座ったままに寝てゐる次第で、 どうあっ […]
封印 丸太ん棒や切り出した石材を見ただけで、 その中に例へば仏像や女体が見えるといふ仏師や彫刻家は その姿形を素材から彫り出す事で既にその作品は完成してゐるのかも知れぬ。 それは換言すれば、姿形を木材に石材に封印されてゐ […]
朦朧 黄泉の国の使者ではあるまいし、 高が睡魔に襲はれたくらゐで、 何も恐れる必要はないのであるが、 しかし、朦朧とする意識の中に観念の化け物でも掲げてみようかと 観念を握りしめた左手を挙げる格好の表象で これで此の世か […]
世界に脱臼する 操り人形の糸が癇癪を起こした操る人に 不意に全てばさりと切れたかのやうに 私の四肢はだらりと脱臼したやうなのです。 それは世界に対しての私の対し方に問題があったとしかいいやうがないもので、 此の世界を認識 […]
行進する 我が物顔で行進するそれは、 こっちの都合なんて全くお構ひなし。 今更参勤交代の時代でもなからうが それが行進すれば、此方は平伏する。 ちらりでもそれを見てしまったならば、 もう意識はそれにこだはり、 盲目になる […]
偽装 そのままでいいと言はれようが、 おれは終始偽装する。 それが世界に対する正統な振る舞ひ方で、 騙し騙される此の世の渾沌の中での唯一残された主体の取り得る姿勢なのだ。 此の世は欺瞞に満ちてゐるなどと嘯い […]