闇深く分け入る毎に烟に卷く闇の正體吾の心か 追つかけて追つかけても摑まらぬ蜃氣樓のやうな吾が後ろ姿 棄てちまへ理想なんて幻はあるのは慘めな吾と知るなむ 初めより存在すると思ふまじ森羅萬象邯鄲の夢 どす黒い吾が慾望の本質は吾が身を喰らひ消ゆること也 Gemini-3.1の批評 Thinking… Refining Analysis of Waka I’m currently delving into the intricate nuances of classical Japanese orthography within the provided waka.Read More闇深く分け入る毎に
触感
触感 この触感が俺に不快を起こさせ、 俺が此の世に存在してゐることを実感させるのだ。 その触感は何かと言へば、 それは肉を噛む時の触感なのだ。 蛸を噛む時の不快が吾を吾足らしめてゐると言ふものが嘗てゐたが、 俺は肉を噛む時の触感が不快でならないのだ。 それは何やら吾そのものを噛んでゐるやうでゐて、 つまり、それが不快の正体には違ひないのであるが、 それ以上に食らふと言ふ事の残酷さにそもそも堪へられぬ柔な俺は、 心の何処かで俺が此の世に存在する事を許してしまふ間隙を突いて 俺は憎らめっ子世に憚るを地で行くやうにして ものを食らって生き永らへる。 そして、その事態に俺は唯、面食らってゐるに過ぎぬのであるが、 俺は俺と此の世で叫べるに値する吾であるならば、 何ものに対しても食らふ事に罪悪感など抱く筋合ひではないのであるが、 俺に食われたものは、さて、此の世でその本望を達せたのかと言へば それは食はれゆくものは、 その本望の途中で殺されてしまひ、 俺に食はれるといふ不条理にあるのは逃れられぬのだ。 それに俺は一時も堪へられぬと知りながらも、 泣きながら俺は肉を食らふのだ。 泣いた事で何かが変はる事なぞありもしないが、 それでもこれが泣かずにゐられようか。 肉を食らふ時の触感は 最早変はる筈もなく、Read More触感
油膜のやうに
油膜のやうに 虹色をその表面に湛へてゐる油膜のやうに なんにでも張り付いて また、それを薄膜で覆ふ油膜こそ、 もしかすると玉葱状をしてゐるかもしれぬ俺の正体を 七色に変化させる妙味となるのか、 それとも水と油のやうに 互ひに相容れる事無く 蒸発して此の世から消ゆる迄 自己主張し続ける油膜は、 存在の在り方として許容出来るのものなのか。 例へば油膜のやうな存在の在り方が許せるとして それで俺は何を其処に見出すのかと自問自答してみると へっ、何にも見つけられない、と言ふのが俺の率直な実力で、 荒ぶる自意識すら手懐けられぬ俺には 油膜の有様は望むべくもない夢のまた夢 しかし、さうだとしても 俺は此の世の作法に則る生き方しか許されぬものとして 柔な人生を送るのに満足出来るのかと言へば それには一時も我慢がならぬ俺は、 我儘に、そして放恣に此の世にあると言ふ有様こそを 求めてゐたのではないのか。 俺の有様を、さて、虹色に変へる油膜のやうな薄膜で 風呂敷包みのやうに包んでみるかと俺自身、独り遊んでみるのであるが、 それはまるで影踏みのやうな自己満足の恍惚しか齎さないのは承知の上で、 自己陶酔する俺といへば目眩みたいなのだ。Read More油膜のやうに
惚けてしまった哀しみの
惚けてしまった哀しみの 惚けてしまった哀しみの 茶色い色はすっかり褪せて、 柿渋のやうな衣魚が残りました。 ――どうして私は と思ふ以前にすっかり草臥れ果ててゐたのです。 それでもやっぱり哀しいと言ふ感情は幽かに蠢いてゐて、 私は無言で涙を流すのでした。 惚けてしまった哀しみは 私の心を蔽ひ尽くしてみたはいいが、 鋭き刃物で剔抉された私の心からは どろりとした哀しみが腐臭を発して流れ出たのです。 それは眼球を抉り取られるに等しい苦悶をもって 眼窩のやうな穴が心に開いたのでした。 さうして、既にどろりと溶けてしまった私の脳味噌は その眼窩からちょろりと流れ出て、 まったく死靈と化してしまってゐたのです。 生きる屍は 此の世の多数派に違ひなく、 誰もが既に鰯の目玉のやうな目つきをしながら、 己を食らふ奴の目玉を睨み付けてゐる筈なのです。 まだしも、食はれるだけでも死んだものは幸せなのでせうか。 既に腐った吾は食ふには最早適さずに、Read More惚けてしまった哀しみの
哀しいと言った奴が
> 哀しいと言った奴が それは何とも不思議な事であった。 確かに哀しいと言った奴がゐて 俺はそちらに面を向けると そいつは既に姿を消してゐた。 ところが、哀しいと言った奴は 姿は隠したが、絶えず声を発してゐて、 俺を弾劾するのであった。 何をして俺は弾劾されねばならなぬかと言ふと 俺がそもそも此の世に存在することが罪だと言ふのだ。 そんな事を言ったならば、 俺以外も同じではないかと思ふのだが、 そいつに言はせると 存在が哀しいと思へぬ者は全て弾劾されるべきものであったと言ふのだ。 確かに哀しいと言った奴がゐて、 そいつの警告を解からぬ馬鹿な俺は、 怖いもの知らずで、俺の存在は、と胸を張り、 さうして墓穴を掘るのだ。 何の事はない、 俺はこれまで一度でも俺の存在に対して胸を張った事はなく、 むしろ、俺は穴があったら入りたいといふ姿勢で これまで卑屈にも生きてきたのではないか。 そいつにすれば、俺のその卑屈さが気に入らなかったのだ。 Read More哀しいと言った奴が
薄明の中の闇
薄明の中の闇 其処に開けた闇へ至る道に 立てる脚を持ってゐるならば、 しっかと両の脚で立ち給へ。 もしそれも出来ないといふのであれば、 匍匐してでも薄明の中でその重たき体躯を引き摺ることだ。 さうして漸く目指すべき闇が開けるに違ひない なにゆゑに今更闇なのかと問ふ奴には ただ、かっと目を見開き睥睨すればよい。 それが唯一のお前の答へるべき姿勢なのだ。 そして、闇に至れば、闇を愛でるがよい。 しかし、此の世に存在しちまったものに 闇に至るべき術はないのだ。 夢のまた夢、それが闇なのだ。 それに気付いてしまったならば、ただ、黙って瞼を閉ぢて 闇紛ひの贋作の闇に戯れる事だ。 さうして、お前に何かが生じれば、 それを以てして お前はこの世知辛い此の世で生を繋げる筈だ。 ふうっと一息吐いて そうして、胸、否、肚一杯に息を吸って 頭蓋内を攪拌してみる事だ。 其処には必ず異形の吾が棲んでゐてRead More薄明の中の闇
撲殺 二
撲殺 二 更に一つのものが有無を言はせずに撲殺されたのだった。 なにゆゑにそれは撲殺されねばならなかったのか、 何ものもその理由を知らず、 さうして、それもまた、撲殺されたのだった。 それは、既に人たる事を已めて、 物になりたく 只管に自虐の渦に敢へて吾を呑み込ませてみたのだが、 何とした事か、それは人たる事を已められず、 人である恥辱をぢっと噛み締めてゐたのだ。 ――人である事は恥辱かね。 と、それには数多の愚問が投げかけられたが、 はっきりと言へる事は、 人は人である事で既に恥辱なのだ。 ――馬鹿を言へ。 何ものも自己である事を已められぬといふギリシャ悲劇の主人公のやうに 既に定められた悲劇の運命を実直に生きねばならぬとしたならば、 誰がこの生を生きられやようか ――嗤はないで呉れないか。 己は悲劇の主人公とはいっちゃゐないぜ。 運命を、苟(いやしく)も吾は知り得ぬのであれば、 さて、そもそも運命とは何ぞや。 それ以前に運命は存在するのかね。 Read More撲殺 二
揺れちゃった
揺れちゃった 浅川マキの歌が脳裡に流れる中、 仄かに揺らぐ吾の在所に 吾既に蛻(もぬけ)の殻 「揺れちゃった」といふ歌詞に 吾もまた揺れちゃったのだ。 陽炎が揺らぐやうに 吾から飛翔する吾の「本質」は また、本質であることをはたと已めて 吾手探りで吾を求める さう、既に吾盲人 何処に消えしか その吾は果たして吾と呼べる代物か 「はっ」と自嘲の嗤ひを吐き捨てるやうに 天に唾するこの吾は 不意にさやうならを言ふのであった 「バイバイ」 さういって此の世を去ったものに対して 吾は吾と何時迄言へるのか そんなもの捨てちまへ、と君は言ふが 吾は吾なるものをどうしても捨てられぬのだ さうして死後もこの世を彷徨ふか それが吾の運命ならばRead More揺れちゃった
嗤ふ死神
嗤ふ死神 そいつは不意に現はれて生を根こそぎ攫ってゆく。 その現実を前にして現存在は為す術もなく ただ、死神の思ふがのままに、 不意に生を断念させられし。 恨めしき死者たちは此の世を彷徨ひ、 生から幽体離脱した死の状況を呑み込めぬままに この激変した現実を全的に受け入れる苦痛を味はひ尽くすのだ。 さうして、死者は初めて、己が死んだことを認識し、 己が肉体とさやうならをするのだ。 この後、ブレイクの銅版画絵のやうに死者は肉体から離れ、 吾が死を悲しみをもって眺めるのか。 それはしかし、残酷極まりないことでしかなく、 生き残ってしまったものにとっては いつまでも宙ぶらりんの現実のまま 現実は止揚されるのだ。 死神の何食はぬ顔で大鉈を揮ひ、 生を根こそぎ奪っていくその刈り取りの様は、 全く慣れたもので感嘆の声を挙げるしかない。 「ふっ」、逃げ惑ふ人間に対して容赦なく生の灯を吹き消すべく、 死神は大鉈を揮ふたびに大風を巻き起こす。 「あっは」とまるで濁流の流れに呑み込まれたやうに 吾はやっとの思ひで息継ぎをし、Read More嗤ふ死神
進退谷まれり
断章『進退谷まれり』 何を思ったのか、彼は不意に哄笑したのである。そのひん曲がりながらも高らかな嗤ひ声には彼の置かれた状況が象徴されてゐて、と、突然彼は涙をその瞳に浮かべたのである。何が哀しかったのだらぅか。 ――そんな事も解からないのか。存在がそもそも哀しいのさ。 ――馬鹿らしい。そんな事は誰もが思ふ事で、殊更に言挙げする必要などないぜ。 彼は何とも名状し難い皮肉に満ちた嗤ひ顔で尚も涙を流すのであった。 ――醜いぜ。男がそんなに泣き顔を世間に晒すのは醜悪以外何ものでもないぜ。 ――なに、死を前にした男の一泣きを、つまり、Swan song(スワン・ソング)を聴く事がそんなに気色悪いかね? 彼は尚も頬に涙を流し、噎び泣くのであった。 曇天の鈍色の雲は竜巻を巻く積乱雲の底のやうに地面近くまで垂れ込めて、彼の泣き声を掬ひ取ったのであった。 ――死を前にした男の泣き声ね、ふっ。お笑ひ種だね。そんなものなど端からある筈がないぢゃないかい? 生まれちまったものは死を抱きしめるしかないのに、何を今更泣く必要があるのかね。全く話にならないね。 その時彼の視野の外縁に突然光が飛び込んできたのであった。それは何だか巴の、若しくは陰陽五行説の太極のやうな勾玉の形をした、つまり、精虫が取り付いた卵子の如く彼の眼に光が飛び込んで来たのであった。さうして、彼の内部には何かが誕生したのである。それが何なのかは、彼が口を開くまで解からぬ事であった。 ――何が見えたのかね? ――何、『お前は死の床に就け!』との天の声が聞こえたのさ。 ――天の声? 馬鹿らしい。 ――お前にかかると何もかもが馬鹿らしいのだな。それぢゃ生きてゐて詰まらなくないかい? ――余計なお世話さ。 ――さう。何もかもが余計なお世話なのだ。それでも此の世には絶えず何かが生まれ、そして、絶えず何かが死んで逝くのだ。諸行無常。森羅万象はこの摂理に対して全くの無力で、それを有無も言はずに造化のままに受容する外ないのだ。それが、果たして何物も我慢出来る代物かね。おれには我慢がならぬのだ。おれにはまだおれの死は受け容れられぬ。 ――……。 ここに彼の進退谷まれり。 さうして彼は茫然と渺茫とした世界を眺めながら、静かに瞳を閉ぢて、死の旅へと出立したのであった。 短歌二首 何ものも 吾を容れる物ならず それ故独り秋月を見る 常世をば 誰もが望み崩れゆく それもまた乙なものとして 夢見するのか Read More進退谷まれり

