撲殺 二 更に一つのものが有無を言はせずに撲殺されたのだった。 なにゆゑにそれは撲殺されねばならなかったのか、 何ものもその理由を知らず、 さうして、それもまた、撲殺されたのだった。 それは、 […]
揺れちゃった 浅川マキの歌が脳裡に流れる中、 仄かに揺らぐ吾の在所に 吾既に蛻(もぬけ)の殻 「揺れちゃった」といふ歌詞に 吾もまた揺れちゃったのだ。 陽炎が揺らぐやうに 吾から飛翔する吾の「 […]
嗤ふ死神 そいつは不意に現はれて生を根こそぎ攫ってゆく。 その現実を前にして現存在は為す術もなく ただ、死神の思ふがのままに、 不意に生を断念させられし。 恨めしき死者たちは此の世を彷徨ひ、 […]
断章『進退谷まれり』 何を思ったのか、彼は不意に哄笑したのである。そのひん曲がりながらも高らかな嗤ひ声には彼の置かれた状況が象徴されてゐて、と、突然彼は涙をその瞳に浮かべたのである。何が哀しかったのだらぅか […]
闇ばかり何処を見ても闇ばかり何時もの事と彷徨ひ歩く あてどなく歩く幸せ幾ばくか踏み迷ひてそれいとをかし 豹変すそんな力が残りしか疑心暗鬼が生む愛憎の涯 残り香に再び火照る吾が情動 […]
寂寞 此の寂寞とした、何とも表現し難き感覚は、何なのであらうか。 ――それ。 と其処に石ころの一つを投げ入れても、カランコロンと虚しい音が響くだけなのだ。 しかし、その寂寞とした其処を、吾は決して見放すこと […]
寂寞な闇に囲まれ渺渺と屹立するは彼我の影法師 落下する意識横目に魂魄は昇るつもりが地に自縄自縛 気紛れに弄ばれつ吾が生は波に消えゆる泡沫なれば たまゆらに現はれしものぶん殴りさう […]
美しきその横顔が艶やかに匂ひ立つ時われ君を抱く 掴むにも掴めぬ月浮く水鏡其処に棲まふは吾が心なりしか 春一番内なるものが蠕動すそれに喰はれて闇に溺れる 暖かき早春の午後懊悩す陽に […]