土壺に嵌まる こんなところに土壺が口を開けてゐたなんてちっとも思はなかったが、 しかし、本心ではそれを期待してゐた己の浅はかさに自嘲するのである。 しかし、外部へちっとも視線が行かぬおれの欠点は、 中原中也 […]
初秋の憂鬱 初秋の風がゆるりと吹くと、 おれはどうしやうもなく憂鬱になる。 朝日が登る様をぢっと凝視しながら、 まんじりともせずに眠れなかった夜明けに、 ぐったりと疲れ、 ひねもす疲労困憊なのだ。 &nbs […]
悲歌 ちっとも哀しくないのに 頬を流れる涙は塩辛くて、 切なさばかりが際立つ。 何故泣いてゐるのか さっぱり心当たりはないのであるが、 さうしてゐても夕日は沈んでゆく。 たゆたゆと夕日は沈んで […]
闇の中の祝祭 何処とも知れずに湧いてきた「魔のもの」たちの祝祭が 漆黒の闇の中で始まった。 それは欧州でのワルプルギスの夜と呼ばれるものに近いのかも知れぬが、 極東のこの島における漆黒の闇の中 […]
瞼裡に再現前した表象に喰はれる 破戒でもしたのだらうか。 おれの意識は、 気を抜くと瞼裡に再現前した表象に追ひ抜かれて、 挙げ句の果ては喰はれる懸崖に追ひ込まれた。 その懸崖といふのがまた曲者で、 その懸崖 […]
今日は草臥れた 何だかな、 今日はとっても草臥れた。 何にも考へたくもないのだが、 つらつらと草臥れた頭蓋内の闇には 例へば落として割れた鏡の欠片に それぞれ違った顔付きのおれが映ってゐるやうな 意味不明な […]
ホモ・サピエンスはホモ・サピエンスを嫌ふ 何故なのだらうか。 ホモ・サピエンスは自身がホモ・サピエンスであることに堪へられぬのだ。 完璧ならざることがその因なのか、 それともそいつは自身が没入できるものを結 […]
幽玄といふ空虚 いざ、彷徨ひける薄闇の中の幽玄なる空虚な世界は、 嫌におれの心をざわつかせ、さうして薄明の中に見ゆるは幻か。 一片の落葉がゆるりと落ちて、その落つる幽かな音が増幅されては しじまに波紋が生れ […]
滅亡に憧れる 正直に生きたければ、滅亡してしまふのが自然だらう。 自他の齟齬に悩むのは当然として、 その中で自我を通すのであれば、己が滅亡するの方に正統性がある。 尤も、それは有体にいへば自己欺瞞の何物でも […]
潰滅 潰滅する自己の辛酸を嘗めたときの哀しみを知ってゐるかい。 それはもう自分では何ともし難い事態であり、 唯、成り行きを見守るしかないのさ。 一度潰滅をはじめた自己はもう元には戻せずに、 潰滅してゆくに任 […]