脱臼する言葉 空が枯れ葉のやうに落ちてくる世界は、 それだけ既に朽ち果ててゐる心臓の様相だ。 搏動が止まった心臓は既に肉塊へと変化し、 それは石へと変容を始める。 石になった心臓は只管意思を封殺し、 唯、私 […]
漆黒の闇 電灯を消した部屋で瞼を閉ぢた途端に、 眼前は漆黒の闇に包まれ、 其処はもう魑魅魍魎の跋扈する世界へと変化する。 何かがぢっと蹲り、 動き出せる機会を窺ひながら、 そいつは己に対して憤 […]
遠吠え 何に呼応してお前はさうして既にかすれた悲哀しか滲まぬ遠吠えをしてゐたのか。 真夜中に何ものに対してかそんな遠吠えしてゐたお前は、 きっと幽霊でも見ちまったに違ひない。 ゆらりゆらりと暗 […]
死を前にして 胸の奥底が飛び出すやうに どす黒い咳をするお前は、 もうすぐ死の床につく。 だからといって日常は日常のまま、のたりと過ぎて、 お前の風前の灯火の命は今にも燃え尽きさう。 既に死相 […]
朝 余りに鮮やかな朝日に対して吾が心は未だに艱難辛苦のままにある。 何にそんなに囚はれてゐるかと問へば、返ってくる自問自答の声は、 ――……。 と黙したままなのだ。 何に対しても不満はない筈なのだが、 己の […]
人工知能について さて、膨大な量の情報に裏付けられた最善の現在を指し示すかのやうに見える人工知能は、 それが、自律的な「知性」を蓄積、 つまり、経験することで身に付けるかのやうに擬人化して把捉すると 将来、 […]
軛 基督の十字架ではないが、 誰にとっても背負ふべき十字架のやうなものがある筈である。 それを今更言挙げしたところで、 それは基督に敵ふ筈もなく、 虚しいだけであるが、 私には十字架とともに軛があるのだ。 […]
紊乱 秩序なき世界が想像できるとしたならば、 そいつは神をもまた創造できる造化に違ひない。 しかし、脳という構造をした頭蓋内の闇たる《五蘊場》の記憶は、 しかし、自在に過去と現在をつなぎ合はせ、 また、近い […]
貧民どもへの哀歌 これは既に何年も前に予測されてゐたことに過ぎず、 このことに対して何の感慨もないのであるが、 貧民の私は勝ち負けで言えば完全に負け組なのだらう。 それでもドストエフスキイが『悪霊』で既に見 […]
断念 何事に対しても既に断念する癖が付いてゐる私は、 決して偶然なる事を受け容れる事は不可能なのだ。 偶然に死すなどと言ふ事は断じて受け容れられぬ。 何もかもが必然でなければ、私は現実と言ふ荒ぶるものを受け […]